コミックナタリー PowerPush - 矢上裕「エルフを狩るモノたち2」

矢上裕がとっておきのレシピを伝授!若手作家に囲まれ大いに語る

ファンタジー世界へと招喚された主人公たちが、日本へと帰るために必要な「呪文のかけら」を集める様を描く矢上裕の代表作「エルフを狩るモノたち」。呪文は女性エルフの身体に貼り付いているため、主人公たちがエルフの服を脱がせまくるという特異な設定で人気を博し、WEBマンガサイトのCOMICメテオでは続編「エルフを狩るモノたち2」も連載されている。

その単行本4巻の発売に合わせ、コミックナタリーでは主人公・淳平の大好物であるカレーを実際に作ってもらうべく、矢上を都内のキッチンスタジオに招喚。オリジナルカレーを調理してもらうとともに、インタビューを敢行し「エルフを狩るモノたち」のルーツに迫った。さらに後半では同作のファンだという、メテオの若手作家・真田ジューイチとTOBIを招き、矢上のカレーを囲んでの座談会を開催したので、こちらもお楽しみいただきたい。

取材・文/宮津友徳 撮影/小坂茂雄

矢上裕のカレークッキング

気づいたらカレーだらけのマンガに

矢上裕

──今日は「エルフを狩るモノたち」シリーズの主人公・淳平の大好物でもある、カレーを矢上先生にお作りいただくべく、キッチンスタジオをお借りしました。

よろしくお願いします。普段こんなシチュエーションで料理をすることがないので緊張しますね。今日は2種類のカレーを作ろうと思っています。ひとつはスタンダードなビーフカレー、もうひとつはインド風のチキンカレーです。

──食材も先生ご自身にご用意いただきましたが、本日作ってくださるカレーのポイントは。

ビーフの方はルウを使った、誰でも作れるような気軽なカレーですよ。身も蓋もないことを言っちゃうと、カレーって市販のルウを使ってレシピ通りに作るのが一番だと思っていて。ただそれだけだとあまりに味気ないので、インドカレーのほうはスパイスからブレンドします。調合に関しては家でいろいろと研究してるんですが、今日は作家さんに食べていただくものなので、家族から一番評判が良かったもので作りますね。

カレー粉の調合に挑む麻衣。

──単行本でも香辛料からカレーを作ろうとする話がありましたが、カレーがここまで随所に登場するのはどうしてですか。

単純な話で、淳平のキャラクターを作るときにまずいろいろな設定を考えていたんです。そのときに何気なく好物はカレーにしようって決めたんですよ。それがどんどん膨らんでしまって、今ではすっかりカレーだらけのマンガに(笑)。

──ご自身の好きなものをキャラに投影されることが多いんでしょうか。

カレーに関してはそうですね。やっぱり好きなものが出てくると描いていてテンションが上がりますし。なんでかわからないですけど、子供のときからずっと好きなんですよね。普段食べてるものの3割くらいはカレーなんじゃないかな。実は今日、お昼もカレーうどんだったんです。

──それだけ食べられても飽きないんですね(笑)。

具を変えたり、カレーの種類を変えてローテーションを組めば意外と飽きないですよ。今日作るカレーは、普段使わないような食べごたえのある厚い肉を使うので楽しみです。早速始めましょうか。

矢上流インドカレー

ビーフカレーとインド風チキンカレーの食材。

──スパイスだけでも10種類以上ありますね。

インド料理って基本的に出汁をとらないから、旨味が不足しがちになるんですよ。それを補うためにシナモンとかを使って香り付けをするので、これだけの量になっちゃうんです。ビーフの方は本当にパッケージ通りの手順なので、ここではチキンカレーの調理手順を説明していきましょうか。

矢上流インド風チキンカレーレシピ

材料(およそ8食分)
スタータースパイス(サラダ油に香りをつけるためのもの。役目が済んだら取り除きます)
  • クミンシード…大さじ1
  • シナモンスティック…1本(あらかじめ押し砕いておきます)
  • チリペッパー(鷹の爪まるごと)…2本
  • ローリエ…1枚
  • ブラックペッパー(ホール)…5~10粒程度
  • クローブ(ホール)…5~10粒程度
煮込み用スパイス(こちらも最終的には取り除きます)
  • ローリエ…3~5枚(適当)
カレースパイス(すべてパウダー)
  • クミン…大さじ1(必須)
  • コリアンダー…大さじ1(必須)
  • ターメリック…大さじ1(必須)
  • カルダモン…大さじ2(爽快な香りが特徴です)
  • チリペッパー…小さじ1(辛くしたければ適宜増量してください。僕の好みは大さじ1)
  • 塩…小さじ2(塩の分量だけは正確に。小さじすりきり2です)
  • ブラックペッパー…小さじ1
煮込み食材
  • サラダ油…150ml(お好みで加減してください)
  • 鶏もも肉…600g(皮と脂は取り除いたほうが無難です。気分次第でむね肉やささみもよく使います)
  • プレーンヨーグルト…200ml(「小岩井生乳100%ヨーグルト」がおすすめです)
  • タマネギ…大1個
  • にんにくチューブ…5センチほど(面倒でなければにんにく2~3片をすりおろしてください)
  • カットトマトの水煮…400ml前後(市販の缶詰や紙パックのものが便利です)
  • ココナッツミルク…400ml(市販の缶詰がたいていこの分量だと思います。苦手な人は水でOKです)
  • バター…約1cm厚(適当)
仕上げ
  • ガラムマサラ
薬味
  • 万能ネギ(または三つ葉、パクチーなど)
まずは下ごしらえとして鶏肉を、ヨーグルトに浸け置きます。胸肉やささみを使う場合、味気なさを補うため、塩少々とガラムマサラ少々で下味をつけておくのもありかと。
鍋にサラダ油150mlと「スタータースパイス」を投入。弱火でゆっくり加熱し、スパイスの香りをサラダ油に移しましょう。ぱちぱちと音が聞こえてきたらスパイス類を取り除きます。クミンシードは小さいので口に入ってもほとんど気にならないため、多少残っていても大丈夫です。
みじん切りにしたタマネギを鍋に入れ、弱~中火でじっくり炒めます。タマネギの水気が飛んだらすりおろしにんにくも加え、にんにくの良い香りが漂うまで炒めましょう。
トマトの水煮を加え、弱~中火で加熱。ぐつぐつと煮立ったら次の手順へ。トマト特有の酸味が苦手な人は、じっくり煮込むことでそれを和らげることができますよ。
あらかじめブレンドしておいた「カレースパイス」を投入。よくかき混ぜながら弱火で加熱します。カレーの良い香りが立ち上がったら次へ。
ヨーグルト&鶏肉、ココナッツミルク、バターを投入。煮込み用のローリエも。弱~中火で加熱し、ぐつぐつ煮立ったら弱火で10~15分。鶏肉に火が通ればほぼ完成です。香りを大切にしたいので必要以上には煮込みません。
念のため味見を。もしも味気無ければ塩を追加します。入れすぎると取り返しがつかないので少量ずつ慎重に。(6)で投入したローリエをここで取り除くか食べながら取り除くかはどちらでも。
火を止めて、香りの補強にガラムマサラを5~10振り。よくまぜて完成です。好みの薬味をトッピングしてお召し上がりください。

──インドカレーから想像するようなスパイシーな匂いというよりは、清涼感のある香りがしますね。

カルダモンという、さわやかな香りのスパイスがあるんですが、僕の好みでそれを多めに入れているからだと思います。

──食べるのが楽しみです。それでは真田先生とTOBI先生がいらっしゃる前に「エルフを狩るモノたち」についてお伺いできればと思います。

矢上裕「エルフを狩るモノたち2」4巻 / 2014年12月12日発売 / 616円 / ほるぷ出版

「呪文のかけら」を集めるため旅を続ける淳平たち一行の前に度々現れ邪魔をする、額に印を浮かばせた謎の「エルフを狩るモノたち」。
その魔の手が迫り、セルシアは淳平たちの敵となってしまう。
シリーズ累計200万部を超える異世界招喚ファンタジー第4巻。

矢上裕(ヤガミユウ)
矢上裕

1969年7月11日生まれ。兵庫県出身。1994年より代表作「エルフを狩るモノたち」の連載をスタートさせ、アニメ化を果たす。無類のカレー好きとして知られる。そのほかの著作に「環境保護隊モッタイ9」「アゲハを追うモノたち」など。