コミックナタリー PowerPush - 映画「銀の匙 Silver Spoon」

荒川弘が太鼓判、原作ファンも大納得!大ヒット農業青春マンガ、完全実写化

荒川弘が週刊少年サンデー(小学館)にて連載中の、「銀の匙 Silver Spoon」が実写映画化を果たした。撮影にあたっては北海道ロケを敢行し、原作でもおなじみの風景や動物たちが数多く登場。また中島健人をはじめとする、マンガから飛び出してきたようなキャストの熱演は、原作ファンからも熱い支持を呼んでいる。

コミックナタリーでは映画の公開を記念し、原作者である荒川弘にインタビューを敢行。自らも農業に携わってきたことで知られる荒川に、映画の見どころや制作秘話について大いに語ってもらった。

取材/唐木元 文/安井遼太郎

いきなり「あのふたりはくっつくんですか!?」と

──「銀の匙」の実写映画、観させていただきました。マンガを原作とした映画は多くありますが、その中でも原作の再現度は最も高い部類だと思います。

そうですね。タマコ役の安田カナさんを筆頭に(笑)。痩せる展開だけはありませんでしたけどね。

──(笑)。本当にキャストの皆さん、すごくいい演技をされていたと思います。主演の中島健人さんと話されたりしたんですか?

「銀の匙 Silver Spoon」カット

はい。中島さん、原作をすごく読み込んで下さっていて。最初にお会いしたとき、いきなり「八軒とアキのふたりは結局くっつくんですか!?」って聞かれて、「あそこまで行って、くっつかなかったら悲しいですよねえ」って答えました(笑)。

──演技する上でのアドバイスなどはされましたか?

いえ、「中島さんの解釈でやってください」とだけお伝えして。実際に演技を見ていると「文化祭でばんえい競馬をやろう!」ってなったあたりから、メキメキと彼本来のカッコいいところが出ている気がしました。

──逆に言うと、前半の暗い八軒は、俳優としての演技力ってことですよね。

死んだ目で、猫背でぼそぼそ歩いてる感じとかね。でも実際にお会いすると、歳相応の明るい、真面目な青年で。事務所の社長からは「コンサート、馬に乗って出たら?」って言われたっておっしゃってました(笑)。

ひとり台本を忘れてきた常磐

──脇を固める俳優陣もすごく印象的でしたね。八軒の父親役の吹越満さんや、富士先生役の吹石一恵さんはすごく迫力がありました。

映画「銀の匙 Silver Spoon」より。(c)2014映画「銀の匙 Silver Spoon」製作委員会 (c)荒川弘/小学館

そうですね。吹石さんってスクリーンやTV画面で観ると、本当に美人でかっこいい女優さんなんですけれど。でも打ち上げなどでお会いすると、普通のきれいなお姉さんなんですよね。いい意味で女優さんな感じがしないというか、オーラが出し入れ自在というか。スクリーンの中の威圧感は何だったんだろうと思いました。

──カメラを向けられたときにスイッチが入るんでしょうね。

俳優さんって、みんなそうですよね。御影の父役の竹内力さんだけは、スクリーンの中も外も、常にあんな感じでしたけど(笑)。怖いというか、面白い人でした。

──あれで本当に怖い人だったら、近づけないですよね(笑)。撮影の現場には行かれたりしたんですか?

夏に、1回だけ。私が見に行ったときは、マラソンから帰ってきた八軒が、馬術部に勧誘されるシーンを撮影していたんですが。そのとき御影役の広瀬アリスさんの引いている馬が、レンズの前に顔を出しちゃって。何度もやり直しさせられていました。

──確かに、動物の撮影には苦労しそうですね。

ええ。カットになるたびに馬におやつをあげるんですけど、それを何回か繰り返しているうちに馬が「このタイミングでカメラの前に出るとおやつをもらえるらしい」と覚えてしまって、間違いを何度も繰り返すんですよ(笑)。

荒川弘がサインをした台本。

──撮影が終わった後は、食事などに行かれましたか。

あ、中島さんや広瀬さんが「原作の話がしたいです!」って誘ってくださったんですけど……ちょうど私が、子供から手足口病をもらってしまって。俳優さんに伝染しないようにということで、お店であいさつだけ。そのときはあまり話せなかったですね。

──なるほど。控室ではほかのキャストの方とも話されたり?

そうですね。キャストの皆さんの台本に、サインを書かせていただいたりして。そのとき皆さん台本を持ってこられていたんですが、常磐役の矢本悠馬さんだけ、台本を忘れてくるっていう役柄通りの行動をされていましたね(笑)。

映画「銀の匙 Silver Spoon」3月7日(金)より全国東宝系にて公開中
映画「銀の匙 Silver Spoon」
進学校に通いながらも受験に失敗し、「寮があるから」という理由だけで逃げるように大蝦夷農業高校【通称:エゾノー】に入学した八軒勇吾(中島健人)。将来の目標や夢を抱く同級生のアキ(広瀬アリス)や駒場(市川知宏)に劣等感を感じつつ、農業高校の生活に悪戦苦闘の日々。しかし北海道の雄大な自然とニワトリ、豚、牛、馬、そして個性豊かな仲間たちに囲まれた常識を覆す農業高校の生活の中で、八軒は悩み戸惑いながらも次第に自分なりの答えを見つけ始める。
「やれば出来るって…無理な事なんかないって」。
そんなまじめで正直な八軒に新たな難題が立ちはだかる…。
  • 出演:中島健人、広瀬アリス、市川知宏、黒木華、上島竜兵、吹石一恵、西田尚美、吹越満、哀川翔、竹内力、石橋蓮司、中村獅童
  • 原作:荒川弘「銀の匙 Silver Spoon」(小学館「週刊少年サンデー」連載)
  • 主題歌:ゆず「ひだまり」(セーニャ・アンド・カンパニー)
  • 監督:吉田恵輔
  • 企画・プロデュース:平野隆
  • エグゼクティブプロデューサー:田代秀樹
  • 脚本:吉田恵輔、高田亮
  • 音楽:羽毛田丈史
荒川弘「銀の匙 Silver Spoon (11)」 / 2014年3月5日発売 / 450円 / 小学館
「銀の匙 Silver Spoon (11)」

もうすぐ春がくる。
エゾノーの寮を巣立つ日が近づいてきた…
疲れた体を引きずって泥のように眠ったベッド…
実習と部活で空になった胃袋を満たしてくれた食堂…
良いことも嫌なことも分かち合った仲間たち…
そして、大豊作な思い出の数々…
八軒勇吾のエゾノーので一年は、濃厚な味がした。
冬編…クライマックス!!

荒川弘(あらかわひろむ)
荒川弘

1973年5月8日北海道生まれの女性。1999年月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)にて「STRAY DOG」でデビュー。同誌での初連載「鋼の錬金術師」が雑誌の看板になるほどの大ヒットとなり、2003年にはアニメ化、その後も映画、ゲームなど多メディア展開が行われた。第49回(平成15年度)小学館漫画賞少年向け部門を受賞。2011年には、週刊少年サンデー(小学館)にて初の週刊連載作品「銀の匙 Silver Spoon」を開始した。自画像として牛を使用するのは、実家が牧場経営なことと、丑年生まれで牡牛座であることに由来する。