音楽ナタリー PowerPush - angela

すべては「K」のために

angelaがニューシングル「Different colors」をリリースした。

前作「シドニア」からわずか2カ月足らずでのリリースとなった「Different colors」の表題曲は、現在全国公開中のアニメ映画「K MISSING KINGS」のテーマソング。そしてそのカップリングには2012年に小松未可子に提供した、テレビアニメ版「K」のエンディングテーマ「冷たい部屋、一人」のセルフカバーバージョンが収録されている。

表題曲「Different colors」はatsuko(Vo)曰く「カッコいいギターリフ」を聴かせる威勢のいいロックチューン。一方の「冷たい部屋、一人」は不穏な響きをたたえた3拍子のバラード。angelaの評価を確固たるものとした「蒼穹のファフナー」シリーズの関連楽曲では、緻密でドラマチックなナンバーの数々を聴かせ、「シドニア」では“日本人のDNAを揺さぶる”マーチ&ダークトランスサウンドを選択したatsukoとKATSU(G, Key)が、アニメ「K」を前にロックを指向する理由とは? 話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 臼杵成晃

なんか「K」っぽいかなー

──シングル「シドニア」リリース時のインタビュー(参照:angela「シドニア」「宝箱2」インタビュー)で、お2人は次回作「Different colors」は「シドニア」とは毛色が違う。劇場版「K MISSING KINGS」の主題歌だけに、テレビアニメ版「K」のオープニングテーマ「KINGS」(2012年)の遺伝子を引き継いだ曲になるとおっしゃっていて。

左からKATSU(G, Key)、atsuko(Vo)。

atsuko(Vo) 「シドニア」とは全然方向性の違う、けっこう正統派のロックになりましたね。

──ええ。シンセや複雑なコーラスも入ってはいるんだけど、ギター、ベース、ドラム、ピアノというごくベーシックな編成のバンドがいれば実演可能なストレートなロックになっています。

atsuko うんうん。

──じゃあ「K」というアニメはなぜangelaにロックを選ばせたのか? つまり「シドニア」でマーチとダークトランスのミクスチャにチャレンジしたお2人が、このサウンドを選んだ理由って?

atsuko なんか「K」っぽいかなーって(笑)。

──またざっくりとしたお言葉を(笑)。

atsuko でも本当にそうとしか言いようがない感じはあって。「K」のテレビシリーズが始まる前に話がさかのぼってしまうんですけど、その頃から「すごく魅力的な男性キャラクターがたくさん出てくる作品だからロックだろ!」みたいな感覚は私とKATSU、お互いの根底になんとなくあったんですね。“オトコ感”みたいなものを意識したサウンド、それこそカッコいいギターリフみたいな、荒々しいサウンドが似合うだろうって。

KATSU(G, Key)

KATSU(G, Key) うん。「K」の音楽は計算して作り込むものではないなっていうイメージは最初からありましたね。僕らが携わったアニメの中でも「蒼穹のファフナー」や「シドニア」は作り込んだ曲を提供するべき作品。音色やアレンジもそうだし、音が鳴るタイミングもそう。一番効果的に音が鳴るタイミングを探りに探って、シーケンスソフトのクオンタイズをしっかりかけるっていう曲の作り方をしてるんですけど、「K」の楽曲に関してはちょっとリズムがズレていてもそれがグルーヴやノリを生んでいるのであれば、そのまま生かす。楽器の編成だけじゃなくて、レコーディングやスタジオワークにおいても生の感覚を重視していますし。

荒々しさ+曇り空=「Different colors」

atsuko 「KINGS」を作っているあたりはまだ探り探り。「『K』といえばロックだろ」っていう意識はありつつも、脚本を読み込みながら「K」に似合うメロディラインや言葉を考えて曲を構成していて。でも、その後テレビシリーズの挿入歌や最終話のエンディングなんかも作らせていただくうちに、あんまり頭を使わなくなっていき……。

──あはははは(笑)。

atsuko 頭を使わなくなったっていうとアレですけど(笑)、「Different colors」に至るまでに6~7曲「K」の関連楽曲を作ってるうちに2人の血液中に「『K』らしさ」が取り込まれたんじゃないかっていう感覚はあるんです。脚本や絵コンテを見て感じたものをそのままメロディなり言葉なりに落とし込めば「K」的な楽曲ができるようになったというか。

左からKATSU(G, Key)、atsuko(Vo)。

KATSU 「これは『K』である」「これは『K』ではない」っていう分別ができるようになったよね。

atsuko うん。だから「Different colors」についてはその「これは『K』である」っていう感覚をそのまま出してみただけなんです。ただ私たちの「『K』っぽさ」ってときどきボツになることもあるんですよ。今回も最初に提出した「K」っぽい曲はプロデューサー的には「K」っぽくなかったらしく(笑)。

──最初のバージョンってどんな曲だったんですか?

atsuko 「Different colors」に比べると、もっと晴れわたった感じの明るい曲だったんですけど、それを聴いたプロデューサーはひと言、「もうちょっと曇り空な感じで」と(笑)。

──確かに「K」って男性キャラが刀で切り結ぶ派手なアクションが魅力の1つになってはいるんだけど、ただただ派手なだけではない。物語全編にどこか死の匂い、終末的な匂いが漂ってますよね。

atsuko そうなんですよね。で「わかりました!」ってことでカッコいいリフを聴かせる、ロックならではの荒々しさは生かしつつ、曇り空感も満載させてみたのが「Different colors」なんです。

angela(アンジェラ)
angela

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年、テレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニングテーマ「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示すこととなる。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数招へいされる。2014年5月には11周年第1弾作品としてシングル「シドニア」、ベストアルバム「宝箱2 -TREASURE BOX II-」、同作と2007年のベスト盤「宝箱 -TREASURE BOX-」の楽曲を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)盤「宝箱と宝箱2が入ったブルーレイで聞くやつ」を同時リリースし、その2カ月後となる7月には劇場版アニメ「K MISSING KINGS」の主題歌「Different colors」を発表した。