ナタリー PowerPush - ボールズ

犬を愛でながら「街と人」を歌う

ボールズがメジャーデビューアルバム「スポットライト」をリリースした。

昨年10月発表の1stミニアルバム「ニューシネマ」が話題を呼び、2枚目となる今作でメジャーデビューを果たした彼ら。今作も抜群のセンスは健在で、センチメンタルな歌詞でつづられた選りすぐりのポップソングをたっぷりと堪能することができる。

ナタリー初登場となる今回は、フロントマンである山本剛義(Vo, G)にインタビューを実施。阪口晋作(B)とのノイズユニットから始まったというバンドの遍歴から、メジャーというフィールドで成しえたい目標まで、たっぷりと話を聞いた。

取材・文 / 小林千絵 撮影 / 佐藤類

ノイズユニットからポップスバンドへ

──まずはバンド結成の経緯を教えてください。

もともと中学高校の6年間、ベースの阪口(晋作)とずっと同じ学校で。最初はバンドじゃなくて2人で歌のないノイズユニットをやってたんですけど、途中で歌が歌いたくなって、バンドメンバーを集めて、ようやく去年の8月に今の体制になりました。

左から星野隼一(G)、阪口晋作(B)、山本剛義(Vo, G)、池田健(G)、谷口修(Dr)。

──歌を歌い始めたのはなぜですか?

ずっと大阪のBEARSっていうライブハウスに出てて「歌ってみたら?」って言われたのがきっかけです。歌い始めてすぐは今みたいなポップスは作ってなくて、すごいオルタナティブなSonic Youthみたいな音楽をやってたんですけど、セットリスト30分、暗い曲ばっかりで。あるとき、明るい曲が1曲あるとフックになるんじゃないかって話になって、明るい曲を作ってみたんです。それが前作「ニューシネマ」に入ってる「ばんねん」で。あれを作ってライブでやったときに、みんながすごくいい曲って言ってくれたんで、ひょっとしてポップスやれるんじゃないかと思って。実際にポップスは歌ってて気持ちよかったんで、変わっていきました。

──急にポップスに転向できるものですか?

僕の母が大瀧詠一さんや山下達郎さんがすごく好きで、ずっと家でそういう音楽が流れてたんです。初めて行ったコンサートは織田裕二さんですし。そういうJ-POPを小さいときからずっと自然に聴いてたんで。結果的にポップスを始めてよかったなって思ってます。

──それはどうして?

ポップスは同じ歌詞でも歌う人の声とか、人柄によって全然違う聞こえ方になるし、人間のリアリティとか自分らしさを出せるものだと思ってて、それをやれるのが楽しいからです。

自分自身をノスタルジックにさせて歌詞を書く

──曲はどうやって作ってるんですか?

ベースの阪口と2人で作ってるんですよ。彼がコード進行とかオケっぽいものを持ってきて歌を乗っけたり、2人で話し合って作ったり、作り方はいろいろなんですけど。どっちかから出てきたものに一緒に色をつけていくって感じですね。

──常にネタはあるんですか?

探してます。洋邦問わずいろんなアーティストの新譜も聴きますし、昔の音楽も聴くし。いろんなテイストの曲を作って、僕らの曲の中で「私はこれが好き」「僕はこっちが好き」っていう選択肢をいっぱい増やしたいです。本当にお客さんを楽しませるっていうのはそういうことなのかなって思ってます。ワクワクさせたいですね。

──ボールズとはこういうバンドであるってイメージを固定化させるのではなくて、いろんなものを提示できるバンドでありたい?

「これがボールズや」っていうものは具体的になくて、このメンバーでステージに立って歌ったらそうなるんじゃないかなって思ってます。だから作るときは「これ俺らっぽくないな」みたいなことはあんまり考えないですね。

──歌詞はどういうところからインスピレーションを受けるんですか?

本を読んだり。あと映画を観るのも好きです。

──そこからどのように歌詞ができるんでしょうか?

映画を観てるときとか本を読んでるときは何も考えないんです。けど観たり読んだりしたものの中から何かを思い出して、思い出したことを歌詞にするっていうことが多いです。

──何を思い出すんですか?

景色です。小説の中で起こっていることを、昔自分が住んでたところのロケーションで想像するとしっくりくるなとか。作品から昔のことを思い出して、自分自身をノスタルジックな気持ちにさせた上で歌詞を書く。なので、本とか映画のこの表現がいいとか、言い回しがいいから参考にしようってことではなく、本や映画で自分の気持ちが動かされて歌詞を書くって感じです。

ニューアルバム「スポットライト」2014年7月9日発売 / 1944円 / Virgin Records / TYCT-60041
「スポットライト」
収録曲
  1. 通り雨
  2. SING A SONG GIRL
  3. 長い夢
  4. 君はまぼろし
  5. サイダー
  6. メルトサマー
  7. スポットライト
ボールズ 1st Album「スポットライト」発売記念ワンマン「スポットライトの夜」
  • 2014年9月19日(金)
    東京都 下北沢SHELTER
  • 2014年9月26日(金)
    大阪府 LIVE HOUSE Pangea
ボールズ
ボールズ

2008年に山本剛義(Vo, G)と阪口晋作(B)の2人で結成。大阪でノイズユニットとして活動していたが、ポップスを奏でるバンドへと転身し池田健(G)、星野隼一(G)、谷口修(Dr)が加入した。2013年10月に発表した1stミニアルバム「ニューシネマ」が、「タワレコ渋谷アワード2013<年間ベスト>」を獲得するなどロングヒットを記録。2014年4月にバンド名を「ミラーマン」から「ボールズ」に改名し、同年7月にアルバム「スポットライト」でメジャーデビュー。