音楽ナタリー PowerPush - fox capture plan

攻める2015年の所信表明

年明け早々の1月10日、fox capture planは年内に3枚のアルバムをリリースすることを発表した。その内訳は、まず4月にアシックスのCMソングに採用された「beyond the beyond」収録のミニアルバムと昨年10月の東京・UNIT公演の模様を収めたライブDVDのセット作品、7月上旬に1990年代洋楽ロックで統一されたカバーアルバム、11月上旬に通算4枚目のフルアルバムというもの。そして12月には東京・LIQUIDROOMでのワンマンライブも決定している。

2011年の結成以来、数多くの作品を発表し「現代版ジャズロック」という特異な音楽性と立ち位置を確立してきたバンドが、いよいよ次の大きなステージへと打って出ていく。今回の発表からはそんな意気込みがヒシヒシと伝わってくるが、最初に届いた作品のタイトルは一見内向きな「UNDERGROUND」。果たしてこのタイトルの真意とは? メンバー3人に今年のプランと新作について、じっくり語ってもらった。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 高田梓

2015年は変革の年

──年明けに1年間で3枚のアルバムを発表することがアナウンスされました(参照:攻めるfox capture plan、年内にアルバム3枚&リキッド公演)。「攻めるなあ」と思うと同時に、「フォックスらしいなあ」とも思ったのですが、実際どんな意図があったのでしょうか?

fox capture plan

岸本亮(Key) 一昨年は1年に2枚アルバムを出したんですけど、去年は1枚だけ……ってそれが普通だとは思うんですけど(笑)、自分たち的には1枚は少ないんで、「来年は3枚くらい出そうよ」ってずっと言ってたんです。カバーアルバムは結成当初から出したいと思ってたし、「UNDERGROUND」に関しては、去年の秋にオンエアされたアシックスのCM曲をいち早く世間に発表したいと思っていたので「beyond the beyond」を入れることがマストでした。

井上司(Dr) 「WALL」について最初に受けたインタビューで、「来年は3枚出そうと思います」って言ってたよね(笑)。だから、「WALL」が出るよりも前から言ってたことなんです。

──今ってアーティストがどんなビジョンを持って活動しているのかを明確に示すこと自体が重要な時代なんだと思います。Mr.ChildrenがUSBメモリでアルバムを出すことを発表したりもしました(参照:Mr.Children、音楽の可能性を追求した全23曲構成のUSBアルバム)が、ホントにメジャーもインディーも関係なく、それぞれがそれぞれのやり方を示す時代なんだなって。

岸本 僕たちのCDのブックレットには「produced by fox capture plan」って入ってるんですけど、まずは自分たち主導で「こういうことをやりたい」っていうのがあって、それをディレクターに伝えて、動いてもらってるんです。ジャケットやビデオクリップも、どういうイメージで曲を作ったかを各クリエイターが汲み取って、それをもとに組み立ててくれてるから、バンドのメンバーは3人だけど、1つのチームみたいな感じで動いてて。だから自分たちのやりたいことができてるって感じですね。

──周りのアーティストを見ていて、「この人たちの動きは面白いな」って思う人を挙げるとすると、いかがですか?

岸本 最近はWHITE ASHがカッコいいなって思いました。今ってどのバンドも精力的に作品をリリースしてるし、ビデオクリップもちゃんと作ってるけど、WHITE ASHは音楽的なアプローチがほかのバンドとは違って「俺らはこうなんだ」って提示してる感じがして、すごく共感できます。なんとなくですけど、2015年は(音楽シーンにとって)変革の年だと思うんです。2014年はけっこうみんな同じ方向に向かってたけど、2015年はどういう音楽が台頭するのかまだみんなあんまり見えてない気がするんですよ。2014年にDaft Punkがグラミー賞を獲ったりして、ディスコやファンクの波が来てるなっていうのはあると思うんですけど、自分たちがそういうエッセンスをどれくらい取り入れられるのかはまだ未知数で……あ、あと水曜日のカンパネラすげえなって注目してます。

カワイヒデヒロ(B) ああいう謎な世界観、「なんじゃこりゃ?」みたいなのって、頭ひとつ抜け出るポイントなんじゃないのかな。

岸本亮(Key)

岸本 声も自然にスッと入ってくるし、トラックもすごい。あれは素人にはできないクオリティですよね。EDMともまた違う、ベースミュージックの流れを汲んだトラックで、かっけえなって。

──水曜日のカンパネラのトラックを作ってるケンモチヒデフミさんは、もともとhydeout productionsにいた人なんですよね。だから、変わった世界観なんだけど音楽的には妙に洗練されてて、そのバランスが面白い。ホントに今はいろんな動きがあって、次のトレンドを誰が担うか……。

カワイ 過渡期っていう感じですよね。

──そこをフォックスが担うぞと。

岸本 そうっすね。

カワイ 否定しない(笑)。

岸本 それぐらいのつもりでね(笑)。逆に言えば、今ってチャンスだと思うんですよ。WHITE ASHや水曜日のカンパネラは「自分たちはこうや」っていうのを提示してると思うんで、それに負けないように、自分たちも「fox capture planこう来たか」って思ってもらえるものを提示したいです。きっと4thアルバムではその方向が明確に出せるんじゃないかと思います。

ミニアルバム+ライブDVD「UNDERGROUND」2015年4月8日発売 [CD+DVD] 2700円 / Playwright / PWT-014
「UNDERGROUND」
CD収録曲
  1. beyond the beyond
  2. 地下の世界に流れる時間
  3. Adam's Apple(オリジナル:ウェイン・ショーター)
  4. Time to think
  5. Tonight Tonight(オリジナル:The Smashing Pumpkins)
DVD収録内容

LIVE at 代官山UNIT / 2014.10.16

  1. into the wall
  2. 疾走する閃光
  3. Elementary Stream
  4. unsolved
  5. capture the Initial "F"
  6. 衝動の粒子
  7. white ambience
  8. this wall
  9. RISING
  10. Tong Poo
  11. Attack on fox
fox capture plan "UNDERGROUND" tour
  • 2015年5月6日(水・祝)宮城県 enn 3rd
  • 2015年5月7日(木)大阪府 CONPASS
  • 2015年5月8日(金)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2015年5月17日(日)東京都 UNIT
  • 2015年5月22日(金)熊本県 NAVARO
  • 2015年5月23日(土)福岡県 graf
  • 2015年5月24日(日)広島県 AGIT
fox capture plan(フォックスキャプチャープラン)
fox capture plan

岸本亮(Key / JABBERLOOP)、カワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)というトリオ編成によるバンド。それぞれ違った個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年に結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドは、数回のライブのみからじわじわと評判を集め、2012年8月にタワーレコード新宿店のみで発売したCD-R「Sampleboard」がノープロモーションにも関わらずフロアデイリーチャート1位を記録。2013年5月には初のフルアルバム「trinity」、2013年12月に2ndアルバム「BRIDGE」をリリースした。2015年はfox capture planとして3枚のアルバムリリースを予定しており、4月にその第1弾「UNDERGROUND」を発表した。

撮影協力:a-bridge