音楽ナタリー PowerPush - KAMIJO

ソロ最初の集大成は“人の心を領土とする帝国”

昨年8月のソロデビュー以降、ミニアルバム「Symphony Of The Vampire」、シングル「Moulin Rouge」「闇夜のライオン」をリリース。フランス革命時の王・ルイ17世をモチーフにした世界観、そして、シンフォニックメタルを軸にしたサウンドによって、極めて独創的な音楽を生み出してきたKAMIJOが、1stフルアルバム「Heart」を完成させた。「人の心を領土にする帝国」をコンセプトにした本作について、KAMIJO自身にたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

裸の状態で臨めたキネマ倶楽部公演

──ニューアルバム「Heart」の話の前に、まずは7月に行われたフランス・パリ公演(「KAMIJO -Zeroth Live in Paris- Throne」)について伺いたいと思います。ソロとしての初ライブだったわけですが、手応えはどうでした?

KAMIJO

日本よりも先にフランスでライブをやるという、なかなか稀なことでしたね。日本のファンの方もすごく熱狂的になってくれるんですが、海外の方はさらにストレートに感情をぶつけてくれるので、そのパワーはものすごいものがありました。ライブの前日に「JAPAN EXPO」に出演させてもらったことで、チケットもソールドアウトして。パリで初ライブを行うということも含めて、「もしかしたら僕はすごいことをさせてもらっているのかもしれない」と思いましたし、その恩返しをしたいという気持ちでステージに立ちましたね。

──その後の作品作りにも大きな影響を与えそうですね。

すごく大きいですね。もともと初ライブをパリで行うという話も、僕の作品がパリを舞台にしていることから出てきたことなので。パリでロケも行ったんですが、思い入れのある場所、美しいと思う場所、例えばモンマルトルの丘の裏通りだったり、真夜中のルーブル美術館だったりで撮影できたのもよかったですね。

──アルバム「Heart」の初回限定盤に付いているフォトブックの撮影ですね。その後に行われた東京・東京キネマ倶楽部でのライブ(「KAMIJO -First Live in Japan-The Empire of Vampire」)はいかがでした?

当初はもっといろいろな要素を詰め込もうと思っていたのですが、ライブが近付くにつれて、その必要性がどんどんなくなっていったんです。「闇夜のライオン」をリリースした直後ということもあって、「どういう反応になるだろう?」と考えながら構築していき、僕とファンの皆さんの距離感を含めて細かいところまでシミュレーションした結果、演出の要素をどんどん削っていったんですよね。つまり、演奏と歌、キネマ倶楽部という場所だけで、十分に表現できるな、と。予定していた特効などもなくして、言わば裸の状態で臨めたと思います。

──実際のライブもシミュレーション通りでした?

ステージに立ってみて、初めてわかることもありました。僕は今までバンドしかやったことがなかったのですが、ソロの場合はサポートメンバーが一歩引いたところで演奏してるんですね。そのぶん、自分の動きの1つひとつに大きい反応があるというか。パッと前に出た瞬間にファンの方が身構えたり(笑)、そういうことも楽しかったです。

リスナーによってアルバムの結末が変わる

──そして9月24日に1stフルアルバム「Heart」がリリースされました。制作に入る前は、どんな構想があったんですか?

3月にリリースした「Symphony Of The Vampire」の続編としても聴けるし、個々の曲が独立しているアルバムにもしたいと思っていました。僕の作品の作り方は、メッセージやコンセプトなどの核の部分を先に決めるんですね。今回の場合は「Heart」というタイトル曲がそれです。ほかの曲も9割方できてたんですが、「どこかつながらないな」という感じがあって。それをつないで、アルバムの核になっているのが「Heart」というわけですね。

──「Heart」という楽曲が生まれたことで、アルバムの全体像が決まったと。

いろんな聴き方ができるように作ったのですが、もしアルバム全体を1本のストーリーとして聴いた場合、結末が2つあるんですよ。1つの結末が「Heart」で、もう1つの結末が「追憶のモナムール」なんです。どうしてそうなったかというと、自分では結末を選べなかったからなんですね。

──そこはリスナーに委ねるということですか?

そうですね。「Symphony of The Vampire」は僕が完全に作り上げた世界を楽しんでもらう作品だったのですが、今回のアルバムは聴いてくださる方が主人公なんです。そのために“人の心を領土にする帝国”を舞台にしてるんですね。その上で、ヴァンパイアと人間の女性の禁断の愛を描く作品にもなっているっていう……。最後は愛を選ぶか、誇りを選ぶかの二択なんですが、それが先ほど申し上げた2曲なんです。どちらも自然に書いた曲なので、あとは聴いてくれた方に選んでもらってもいいかな、と。リスナーの方の感情との化学変化によって、アルバムの結末が変わるというか。

──重層的な作品なんですね。

ヒロイン役の女性に自分を当てはめてもらってもいいし、男性の方であれば、ヴァンパイア──僕の中では「Symphony of The Vampire」の主人公であるルイ17世なんですが──に当てはめてもらってもいいと思います。KAMIJOの世界の中に入ってもらって、そこで感じたことを自分なりに消化しながら楽しんでもらいたいですね。アルバムを聴いていると「この歌詞はほかのところでも出てきた」と気付くこともあると思うんです。で、聴き直してもらうと「こことここがつながってたんだ」ということがわかるかもしれないし。そういう“謎解き”も多いですね。

自分の歌声が大好きになってきてる

──このアルバムはいろいろな解釈が可能なんですね。

深読みしやすくなってます(笑)。もともと僕は推理モノが好きだし、その影響も色濃く出てますね。一番好きなのは、「名探偵コナン」と「ルパン三世」なんですが。

KAMIJO

──めちゃくちゃメジャーな作品じゃないですか! そういうエンタメ感は、KAMIJOさんの音楽にもあるような気がします。

制作しているときは、ただ自分が聴きたいものを作ってるだけなんですけどね。こういうインタビューで話をさせてもらって、それが活字になると、ものすごく考えて作ってるような感じがするじゃないですか。実際はそうじゃなくて、その瞬間の感覚で作ってることが多いんですよ。完成したあとで「振り返ってみるとこうだったな」ということを話しているので。「自分のこういう声を聴きたい」ということで曲を作ることもあるし。

──ボーカルを強調した曲ということですか?

この1年くらいなんですけど、自分の歌声がホントに大好きになってきてるんですよね。こんなこと言うとナルシストみたいですけど(笑)。例えばアルバムに入っている「サンクチュアリ」という曲だったら、平歌は抑えて、サビでは高音で張ってるんですね。そのダイナミックレンジを自分で聴いてみたくて作った曲でもあって。社会のリーダーの方々に向けた応援歌でもあるんですけどね。

──自分の歌への愛着って、バンド時代にはなかった感覚なんですか?

以前、LAREINEというバンドをやっていたときは“自分の歌が好き”というよりも、“こういう声の人はほかにいない”ということに誇りを感じて、“この声を変えたくない”と思っていましたね。“自分の声をずっと聴いていたい”と思うようになったのは、ここ最近です。ソロである以上、一番の中心は歌声だと思うし……。このアルバムでヴァンパイアと人間の女性のラブストーリーを描いたのも、そうしないと歌声に“何か”が乗っからないからなんですよ。

──“何か”というのは?

太くてカッコいい声で歌うことはいくらでもできるんですが、それだけではなく、愛しさみたいなものも表現したいので。曲の中にある男性像、女性像を声で出すことも楽しいし。例えば6曲目の「Romantique」は、初めて聴き手を口説くつもりで書いたんです。KAMIJOが本気でロマンティックな歌詞を書くとこうなる、っていう。この歌声は自分でも心地いいと思うし、ぜひヘッドフォンなどで聴いてほしいですね。

1stフルアルバム「Heart」2014年9月24日発売 / Warner Music Japan
初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / WPZL-30917~8
通常盤 [CD] 3240円 / WPCL-11964
CD収録曲
  1. Vive le Roi
  2. Rose Croix
  3. 闇夜のライオン(※メジャー2ndシングル)
  4. Louis ~艶血のラヴィアンローズ~(Symphonic Metal Version)(※ソロデビューシングル)
  5. Death Parade
  6. Romantique
  7. 抱きしめられながら
  8. Moulin Rouge(※メジャー1stシングル)
  9. サンクチュアリ
  10. 片手に夢を持つ少女
  11. 追憶のモナムール
  12. Heart

<通常盤ボーナストラック>

  1. Presto(アコースティックバージョン)
初回限定盤DVD収録内容
  1. Heart(Music Video)
  2. Louis ~艶血のラヴィアンローズ~(Symphonic Metal Version)(Music Video)
  3. Moulin Rouge(Music Video)
  4. 闇夜のライオン(Music Video)
  5. 追憶のモナムール(Image Clip)
  6. MAKING & MASSAGE
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<送付開始予定日>
2014年12月24日(水)~随時

ニコニコ生放送「KAMIJO ソロ・ファースト・フル・アルバム『Heart』発売記念スペシャル」

配信日時:2014年9月29日(月)21:00~
配信URL:
http://live.nicovideo.jp/watch/lv194246900

ライブ情報
KAMIJO「HALLOWEEN SPECIAL LIVE“大仮面舞踏会”」

2014年10月25日(土)東京都 東京キネマ倶楽部
<出演者>
KAMIJO / HIZAKI / Schwarz Stein / MU

KAMIJO「TOUR 2014“THE DEATH PARADE”」
  • 2014年11月1日(土)北海道 cube garden
  • 2014年11月8日(土)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2014年11月15日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2014年11月22日(土)大阪府 OSAKA MUSE
  • 2014年12月13日(土)東京都 AiiA Theater Tokyo
KAMIJO(カミジョウ)

1999年、ヴィジュアル系ロックバンドLAREINEのボーカリストとしてSME Recordsよりデビュー。その後2007年春にVersaillesを結成し、2009年にワーナーミュージック・ジャパンよりデビューした。Versaillesはデビュー作となるシングル「ASCENDEADMASTER」でオリコン週間ランキング8位を記録し、2012年12月にファンに惜しまれつつ活動休止。KAMIJOは在籍したバンドでほぼすべての作詞と大半の作曲を手がけており、劇伴制作でも才能を発揮している。2013年8月にシングル「Louis ~艶血のラヴィアンローズ~」で満を持してソロデビュー。2014年3月にはワーナーミュージック・ジャパンからソロメジャーデビュー作品「Symphony Of The Vampire」をリリースし、6月、7月に2カ月連続でシングルを発表。9月には1stフルアルバム「Heart」をリリースした。