ナタリー PowerPush - 水樹奈々

未来へつながる“歌謡曲”の力

水樹奈々が通算10枚目となるオリジナルアルバム「SUPERNAL LIBERTY」を完成させた。記念すべき節目の1枚を作るにあたり、水樹がテーマに掲げたのは“歌謡曲”。演歌歌手に憧れ歌と出会った少女が、アニメソング界を牽引する声優アーティストのトップランナーとなった今、自身のルーツをじっくりと見つめ直し、未来へとつながる作品を目指して作り上げたのがここに収められた15曲だ。今回のインタビューではアルバム全曲に込められた思いを1つひとつ語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃

節目にこだわる水樹奈々の「記念すべき10枚目」

──今年の誕生日(1月21日)のブログで「17歳×2になりました(笑)」(参照:水樹奈々 公式サイト NANA PARTY BLOG)という報告とともに、「3と4…足すと『ナナ』になるスペシャルな年っ!」と書いてましたよね。節目や「7」にまつわる数字にこだわりを持つ水樹さんですけど、そこまでこだわるかと(笑)。

あはははは(笑)。こじつけ大王でホントすみません(笑)。

──それって子供の頃からなんですか?

水樹奈々

どちらかというとデビューしてから強く意識するようになりました。でも子供の頃からやっぱり7という数字には敏感で、例えば見かけた車のナンバーに7が入っていたら今日はラッキー!とか。

──節目や数字を重んじる水樹さんとしては、やはり「10thアルバム」の響きはかなり大きなものなのでは?

そうですね。私は17歳で声優としてデビューしたので、その倍の時間が過ぎたと思うとすごく感慨深いですし、そんな年に10枚目のアルバムが出せるというのは本当にうれしいです。

──オリジナルアルバムとしては1年4カ月ぶりとなりますが、その間は新たなチャレンジが多かったですよね。西川貴教さん(T.M.Revolution)とのコラボレーションや、初の海外公演となる台湾でのライブなど。海外公演はいかがでしたか?

楽しかったです! 行くまでは不安も多くて……。国内でのツアー(「NANA MIZUKI LIVE CIRCUS」)の追加公演として行ったんですけど、やはり言葉や文化の違いがあるし、ライブの盛り上がり方にも違いがあると思うから曲順は考え直したほうがいいんじゃないかとか。とにかく未知な部分が多くて、想像だけではカバーできないところが大きかったから、行くまでは三嶋(章夫)プロデューサーと一緒に「大丈夫かなあ、大丈夫かなあ」ってずっとそわそわしてました(笑)。でもまず到着してすぐに、ファンの皆さんが温かく迎えてくださって。皆さん情熱的だけどすごく礼儀正しくて。ライブにもたくさんの方が来てくださって、入れなかった方も会場の周りで静かにサイリウムを振って応援してくれてたんです。

──よく音楽は国境を越えると言うし、ましてやアニソンの国境越え具合はすごいと噂に聞きます。普通に日本語で大合唱が起こったりとか。

そう! そうなんです! 一緒に歌ってくれたのが一番の感動でした。日本でライブをするのとまったく変わらない光景が広がっていて……。一緒に歌ったりコールを入れたり。すぐに緊張がほどけて、「これは最初からフルスロットルで行かないと愛に応えられない」と思って、1曲目からアンコールに近いぐらいのテンションでした(笑)。

核に備えておくべきは歌力とメロディ

──たくさんの経験値を積まれた上で、節目となる10thアルバムはどのような作品にしようと考えましたか?

まず10枚目の記念すべきアルバムということで、時間をかけて作りたいねということは最初に三嶋さんと話しました。去年の3月ぐらいからデモテープを集め始めて、1年かけて作っていったのですが、テーマが決まったのは「LIVE CIRCUS」の国内公演が終わった8月あたりです。だんだんアルバムに収録したい曲が決まってきて、パッと浮かんだのが「レトロ&フューチャー」というテーマでした。これまで出会ってきたさまざまな音楽を融合させて、新しい音楽を生み出すようなイメージで。10枚目ってやっぱりこれまでの集大成でもあるし、次の目標に向かってスタートを切る始まりの1枚でもあると思うんです。昔からある素晴らしいものと、今の面白い音楽を融合させたら、きっと未来につながる楽しい音楽ができるんじゃないかなって。

──自分のルーツにある音楽と、2014年のサウンドを融合させて。

そうするときっとあり得ない取り合わせの音楽、個性が際立った音楽になると思うけど……でも核にあるのは“歌謡曲”なんです。歌謡曲が持つストレートな表現にしたくて。私が最初に音楽に触れたのは歌謡曲、演歌だから、自分の核には歌謡曲や演歌の持つ日本人魂が強く根付いているんです。

──まさに一聴して感じたのは“歌謡曲”のテイストでした。サウンドは色とりどりだし、実験的とすら感じるものもあるけど、強烈に歌謡曲のソウルを感じるんですよ。アルバム制作はいつも水樹さんがやっている通り、おびただしい数のデモ音源を聴いた中から直感的に「これがいい」と1曲ずつチョイスしていったんですよね。そこからじんわりあぶり出されたのが“レトロ&フューチャー”であり“歌謡曲”だったと。

はい。直感で選んでいく中で……きっと大きなきっかけになっているのは「Vitalization」(2013年7月発売の29thシングル)ですね。あのシングルの存在がとても大きかったんです。「Vitalization」はトリッキーで刺激の強い楽曲ですけど、同じシングルの中に「愛の星」という優しくて温かいバラードも入っていて。両極とも言える2曲を1つに収めることによって、自分のやりたいことが明確に見えてきたというか。今はいろんな音楽があふれているけど、核に備えておくべきは歌力とメロディなんだなって。

ニューアルバム「SUPERNAL LIBERTY」 / 2014年4月16日発売 / KING RECORDS
初回限定盤 [CD+Blu-ray] 3888円 / KICS-93036
初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / KICS-93037
通常盤 [CD] 3024円 / KICS-3036
CD収録曲
  1. VIRGIN CODE
    [作詞:Hibiki / 作曲:上松範康(Elements Garden) / 編曲:藤田淳平(Elements Garden)]
  2. GUILTY
    [作詞:SAYURI / 作曲:藤末樹・Ramon Riu / 編曲:角田崇徳]
  3. アパッショナート
    [作詞・作曲:水樹奈々 / 編曲:藤間仁(Elements Garden)]
  4. 笑顔の行方
    [作詞:吉田美和 / 作曲:中村正人/ 編曲:藤田淳平(Elements Garden)]
  5. アンティークナハトムジーク
    [作詞:藤林聖子 / 作曲・編曲:古川貴浩]
  6. Fun Fun★People
    [作詞:菜穂 / 作曲・編曲:h-wonder]
  7. FATE
    [作詞:水樹奈々 / 作曲・編曲:陶山隼]
  8. Vitalization -Aufwachen Form-
    [作詞:水樹奈々 / 作曲:上松範康(Elements Garden) / 編曲:上松範康・菊田大介(Elements Garden)]
  9. 哀愁トワイライト
    [作詞:水樹奈々 / 作曲・編曲:宇佐美宏]
  10. セツナキャパシティー
    [作詞・作曲:丸田新 / 編曲:藤田淳平(Elements Garden)]
  11. Ladyspiker
    [作詞:しほり / 作曲・編曲:中野領太]
  12. Rock you baby!
    [作詞:水樹奈々 / 作曲:遠藤直弥 / 編曲:角田崇徳]
  13. Million Ways=One Destination
    [作詞:前山田健一 / 作曲:伊藤賢治・前山田健一 / 編曲:伊藤賢治]
  14. 僕らの未来
    [作詞・作曲・編曲:矢吹俊郎]
  15. 愛の星 -two hearts-
    [作詞:水樹奈々・吉木絵里子 / 作曲:吉木絵里子 / 編曲:藤間仁(Elements Garden)・上松美香]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
  • オリジナルドキュメンタリー「なつのカケラ ~ 水樹奈々 2013夏の出来事」-SPECIAL EDITION-
  • 「SUPERNAL LIBERTY」PHOTO SHOOTING
水樹奈々(みずきなな)

愛媛県出身の声優アーティスト。1997年に声優としてデビューし、「魔法少女リリカルなのは」「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト-」といったアニメ作品で人気を集める。2000年にはシングル「想い」で歌手デビュー。2009年6月にリリースされたアルバム「ULTIMATE DIAMOND」で、声優アーティストとして初のオリコン週間ランキング1位を獲得した。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2011年12月には声優アーティスト初の東京ドームコンサートを2日間にわたって開催し、大成功に収めた。2012年12月に通算9枚目のオリジナルアルバム「ROCKBOUND NEIGHBORS」を発表。2013年には台湾にて初の海外公演を行い、同年末には5年連続となる「NHK紅白歌合戦」への出場を果たした。2014年4月には通算10枚目となるオリジナルアルバム「SUPERNAL LIBERTY」をリリース。