音楽ナタリー PowerPush - 森恵

プロデューサーASA-CHANGと解き明かす“新しい自分”の正体

シンガーソングライターの森恵がミニアルバム「オーバールック」をリリースした。本作はプロデューサーにASA-CHANGを迎えて作られた6曲のポップソングを収録。軽快なギターポップから電子音をフィーチャーしたトリップホップ調のナンバーまで、サウンド面において森の新しい一面を見られる内容に仕上がっている。

ナタリーではアルバムリリースを記念して森恵とプロデューサー・ASA-CHANGのインタビューを実施。今作で彼女が見いだした“変化”の正体や、ASA-CHANGが何を考えて彼女の作品に携わったのかなどを語ってもらった。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 福岡諒祠

いろいろな景色を見せてもらった

──まずは作品について率直な感想を聞かせてください。

左から森恵、ASA-CHANG。

森恵 予想以上に高いところへジャンプできたなって感じています、ジャケットでも跳んでるんですけど(笑)。今回は今までの私とまったく違う要素を出していきたいと思ってたんです。それはどれだけ自分の殻を破れるかだけでなく、どれだけ外の刺激を受けながら曲を作れるかっていうチャレンジでもあって。その刺激を今回ASA-CHANGさんからもらいました。まるで跳び箱のジャンプ台みたいに「こんなとこまで跳べるよ」って教えてもらったというか。いろいろな景色を見せてもらったなあと思っています。

ASA-CHANG 僕はこのアルバム、6曲全部リード曲だと思ってますね。

──ASA-CHANGさんがこの作品のプロデュースを手がける上で意識したことはありますか?

ASA-CHANG はい。森さんをジャンプさせるって役割を務めるにあたって、まず着地点をきちんと見極めなきゃなって考えましたね。僕と言えばまず民族系の打楽器だったり声のサンプリングみたいなデスクトップミュージックだったりがイメージとして浮かぶと思うんですけど、プロデュースってそういう自分の持ってるものをすべてぶつけりゃいいってもんじゃないんですよね。だから最初の段階から森さんといろいろ話をしてすり合わせました。「嫌いなものは何? 好きな色は?」とか。

 「いきなり嫌いなものの話から?」って最初びっくりしました(笑)。

──森さんがプロデュースをASA-CHANGさんにお願いしたきっかけは?

 私は小学校のときから管楽器の音が好きで、スカパラさんも聴いてました。なのでスタッフからASA-CHANGさんのお名前が出たときに興味を持ったんです。でもASA-CHANGさんのこれまでの作品を聴いたときはびっくりして。「私どう変わるんだろう。これはチャレンジだな」って思いましたね(笑)。

ASA-CHANG やっぱりそういうイメージが強いんだなあ。森さんのマネージャーさんに初めて話したときも「……やっぱタブラとか入れちゃうんですよね?」って心配されましてね。そんなことないよ! 意外とそうじゃない作品たくさんあるよ!って伝えましたよ。

──作品を聴くまでASA-CHANG&巡礼などのような不可思議な電子音楽を想像していたんですが、実際はあくまで森さんの歌とアコースティックギターに軸足を置いたストレートな歌モノ作品だったので驚きました。

ASA-CHANG 今どきプロデューサーが見えちゃうような作品ってないですよ。だって森さんちの表札に「ASA-CHANG」って書いてあっちゃダメじゃない?(笑)

僕は背景を描くだけ

──アルバム制作にあたって、森さんはASA-CHANGさんにどんなリクエストを?

森恵

 自分の中で「この曲はこういうイメージで」っていうのはあったんですけどあえて言わないで、どんな作品になるかを楽しみに待ちました。直接伝えちゃったら面白くないというか、一緒にやらせていただく意味がないなって思ったんです。だから私が楽曲のデモを作り、その先の制作はASA-CHANGさんにお任せしました。

ASA-CHANG いただいたデモにはすでにクオリティの高い歌と演奏が入ってたんです。これ宅録なんてレベルじゃないよ!って驚くようなものが。それを聴いて僕は「これなら曲ごとにアレンジを変えてしまってもブレないだろうな」って確信したんです。それで今回はアレンジャーを4人も起用するっていうぜいたくなことをしています。

──デモの段階でプロデューサーとしての役割がすぐ見えたと。

ASA-CHANG はい。舞台の真ん中にはもう森さんが立ってるんだから、僕は背景を描くだけというか、芝居で言えば書割を作ってあげるような感覚に近いなと。

──その立ち位置の中でASA-CHANGさんが目指したものは?

ASA-CHANG 僕はプロデューサーとして森さんに“いい裏切り”を与えたいなって考えました。今まで森さんが着たことのない服だけど「どう?」って提案して新しい一面に気付いてもらえたらと。

ミニアルバム「オーバールック」2014年10月15日発売 / 2052円 / cutting edge / CTCR-14821 / Amazon.co.jp
「THE SHOW MUST GO ON」
収録曲
  1. この手の中に(アレンジ:八橋義幸)
  2. 星に願いを(アレンジ:間宮工)
  3. Lala...(アレンジ:八橋義幸)
  4. 僕が愛した時間(アレンジ:安宅秀紀)
  5. 赤い心(アレンジ:八橋義幸)
  6. 君の隣(アレンジ:澤田かおり)
森恵(モリメグミ)

森恵広島県出身、1985年生まれの女性シンガーソングライター。高校生時代に地元を拠点としたストリートライブでファンを増やし続け、2010年にcutting edgeからメジャーデビュー。2012年にはメジャー1stフルアルバム「いろんなおと」をリリースする。2014年には2ndアルバム「10年後この木の下で」のリリースのほか、完売となった東京・SHIBUYA-AX公演およびMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 2DAYSワンマンライブを実施。またギターメーカーのギルドスターズと日本人アーティストとして初のエンドースメント契約を結んだほか、テレビ番組出演などでも話題を集める。2014年10月にはプロデューサーにASA-CHANGを迎えたミニアルバム「オーバールック」をリリースした。

ASA-CHANG(アサ・チャン)

ASA-CHANG福島県いわき市出身のドラマー、パーカッショニスト。1985年から1993年まで東京スカパラダイスオーケストラの創始者として活動。スカパラ脱退後は多数のアーティストのサポートメンバーとして活躍する一方でChara、小泉今日子、UA、一十三十一などの楽曲プロデュースも担当。1998年にはASA-CHANG&巡礼を結成し、トライバルかつアブストラクトな楽曲で話題を集める。2014年2月には自身のプロデュース作品集「ASA-CHANG & 蒐集」をリリース。9月にはASA-CHANG&巡礼名義でライブシリーズ「アウフヘーベン」を始動させた。