音楽ナタリー PowerPush - 長渕剛

命懸けのメッセージ

長渕剛のライブDVD / Blu-ray「TSUYOSHI NAGABUCHI "ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST" Live! one love, one heart」がリリースされた。

この作品は長渕が8月から1カ月かけて12公演を行ったアリーナツアー「TSUYOSHI NAGABUCHI "ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST"」から、東京・日本武道館公演の模様を収録したもの。アメリカから強力なサポートメンバーを迎えた新バンドのお披露目となった本ツアーの充実ぶりを、映像とサウンドで余すところなく伝えている。

今回ナタリーではWEBインタビュー初登場となる氏に、映像作品の見どころや来年8月に富士山嶺でオールナイトライブ「長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」を実施する意図について、さらに若いアーティストへのメッセージなどを語ってもらった。

取材・文 / ジョー横溝

メッセージを発信すべき先はいつも10代

──長渕さんはナタリー初登場ですよね。

初めてですね。というよりWEBのインタビューを受けるのは初めてだな。

──ではまずはざっくりとした質問から。長渕さんは今年でデビュー37年です。その長い活動の中、長渕剛は今どのような時期にいると思いますか?

うーん、人生の第4コーナーに差し掛かっていると思うね。でも大御所と言われたらおしまいだと思ってる。いつも新人。そして、メッセージを発信するべき先はいつも10代。これはもうデビューしてから変わらない。だから「先生」とか「大御所」と言われるようになったら引退かな。言動、行動も含めて「しっかりしてるよ。あの人はさすがだよ」って人に言われたら終わりだな(笑)。いつまでたっても「アイツは変わらねえよな」って言われているのが一番いいな。

長渕剛「TSUYOSHI NAGABUCHI

──なるほど。今年はベストアルバム「TSUYOSHI NAGABUCHI ALL TIME BEST 2014 傷つき打ちのめされても、長渕剛。」(参照:長渕剛37年の闘いを刻んだ自薦ベスト、伝説ライブ映像も)を出してツアーを回って、そしてツアーの模様がBlu-ray / DVDとして発売されます。今回のツアーは、キーボーディスト、ベーシスト、ギタリストを海外から招聘し、長渕バンド初参加のメンバーが帯同していましたよね。端から見たらちょっとリスキーな感じもしましたが、そういった部分も“長渕流”といった感じなのでしょうか。

新しいことをやるときは必ずリスクはある。それよりも「こうしたい」「そうしなきゃ」っていう気持ちに正直にやっていくのが大事だと思ってる。やっぱり、ツアーをやるたびに毎回オーディエンスに「すげえ!」って言わせたいよね。

──僕は実際に現場であのライブを観たんですけど、最高のステージでした。1曲目からアンコールのようなテンションで。

海外から参加したメンバーは初日の1曲目のオーディエンスのノリを見て「すごい! こんなの見たことねえ!」って異口同音に言ってたよ。ギターのピーター・ソーンはEaglesでも弾いてるから「お前Eaglesで『Hotel California』弾いてたんだろ? そんときお前何歩動くんだよ?」って聞いたら、「前に3歩動いて、フレーズ弾いたらうしろに下がるだけだ」って(笑)。で、「お前、俺とツアー回って人間変わっただろ?」って聞いたら「変わった」って。

──あはははは(笑)。

本当に音楽を楽しみ、彼らの音楽人生の中でも自分がやりたかったことを開花できたというふうに言ってくれて、帰るときは号泣してましたね。それは音楽とオーディエンスと我々スタッフが織り成したグルーヴの中で生まれた友情なんだ。

──ステージだけじゃなくBlu-ray / DVDに収録されているオフショットからも今回のツアーの充実ぶりがうかがえますが、あえて長渕さんオススメのシーンを挙げるとしたら?

うーん、全部観てほしいな。観たら幸せになれるよ。しかもこれ、俺がやりたかった“ロックショー”という形ではこれ以上のものはできないって内容だったね。誰が見てもそう思える。ざまあみろ!(笑) 何十年もかかかったけれど、やっとこういうショーができたな。

10代の子供たちがさび付かないように

──ところで、10月にスタートした「SCHOOL OF LOCK! Saturday 長渕LOCKS!」が10代の子たちに大人気だとか。僕も先日聴いたら、10代のバンドをやってる男子と長渕さんが電話でマジでバカ話をしたり、真剣に悩みを聞いたりしていて惹き込まれました。ああいうふうに10代と直接しゃべるのはどうですか?

最高に楽しいよ。そもそもラジオっていうのも好きだ。だって、俺もラジオ出身だからね。自分も何もない10代のときに人生……つまり音楽ですけど、そういうものをつかんだわけですからね。そしてそのときから今まで、ギターをずっと手放していない。そういうこともあってか、10代の子たちを本当に大事にしていきたいよね。“俺の心にある10代”がさび付いていかないように生きていきたい。過去にあった自分の10代、そして今現実に生きている10代のみんな、全部俺の中ではイコール、等しく愛しいんだよ。今の大人たちには興味ないんです(笑)。お前らは勝手に自分のこと考えろって(笑)。だけどコイツらは迷ってるぞって。なんかね、10代を見つめていると、心がきれいになるような気がするよ。

長渕剛「TSUYOSHI NAGABUCHI

──そうなんですね。

自分が迷いながら社会に飛び込んだときに、いいことよりも失ったことや悪いことのほうが多かった。何も知らず、学校でも教えてもらえず、当たって傷付いて、そして立ち上がれないことが多かった。ただ俺はそれを表現という方法に置き換えて生きてこれたんだけどね。だから今の悩む10代の子たちには自分の体験を通して手にしたことと、失ったこととをちゃんと教えていきたいなって思う。そうやって10代を本気で抱きしめたり怒ったりして向かい合って生きていたいよね。それと……。

──それと?

今あいつらが悩んでいるこの時期こそが、彼らにとっての本当の宝物なんだってことを教えたい。本当の宝物だから大事にしろって言ってやりたい。悩んでいても絶対大丈夫だって、ラジオを通して全国の10代にしっかり言ってあげたい。

──12月5日に配信された新曲の「明日へ続く道」は、迷っている10代に対するエールなのかなって。

それもそうだし、老若男女問わずそれぞれの心の中にある輝かしい10代の頃の記憶や気持ち……それを大事にしていけば明日が見えるかもしれないっていうことを歌いたかったんですね。

──「あきらめないで」という歌詞の部分を長渕さんが力を込めて歌うところに心揺さぶられました。いろいろあるけど、あきらめるという選択肢をとった途端に夢って終わってしまうんで。どんなにボロボロでもあきらめるなということなのかなって。

そこが一番大事だよね。実際俺もそうだったから。絶対あきらめなかった。負けてもいい。ただ、あきらめと負けは違う。今ここで負けたとしてしても、10年後だって20年後だってあきらめなければ、今負けたアイツに10年後に会って「元気か?」って言って仕返しすることができる。そのとき、そいつがどう答えるか。そこが勝負だろって。そういう思いで自分は生きてきたから。そういった意味では負けはいいんです。負けは力に変えられますからね。でもあきらめたら、もう何も始まらない。

──あきらめたら、すべてが終わってしまうんですよね。

あきらめたら終わりだから。だから勝手に自分の夢に幕を引くなって。そう思ってくれる仲間たちがたくさん増えて、横一列になって民衆の力となり、俺たちが信じる力や、仲間という連帯の力を持ち、1歩1歩ともに前へ突き進んでいくと必ず時代が動くと信じています。そう、“明日へ続く道”は、俺たち民衆の力を強くして作るものです。

ライブDVD / Blu-ray「TSUYOSHI NAGABUCHI "ARENA TOUR 2014 ALL TIME BEST" Live! one love, one heart」 / 2014年12月20日発売 / ユニバーサルミュージック
Blu-ray / 9980円 / UPXH-20033
DVD2枚組 / 8980円 / UPBH-20129~30
収録内容
  1. Opening
  2. 泣いてチンピラ
  3. 勇次
  4. 明日をくだせえ
  5. カラス
  6. シェリー
  7. 西新宿の親父の唄
  8. 逆流
  9. HOLD YOUR LAST CHANCE
  10. 夏祭り
  11. 俺らの家まで
  1. パークハウス701 in 1985
  2. 順子
  3. 青春
  4. Success
  5. 情熱
  6. 明日へ向かって
  7. しゃぼん玉
  8. RUN
  9. 俺の太陽
  10. 桜島 SAKURAJIMA
  11. Myself ~ Ending
特典映像
  • ライブの舞台裏の“ショートムービー集”
配信シングル「明日へ続く道」 / 2014年12月17日配信開始
「明日へ続く道」
レコチョク
長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓

2015年8月22日(土)静岡県 ふもとっぱら
START 21:00 / END 6:00

※オールナイト公演
※公演中に数回の休憩あり

長渕剛(ナガブチツヨシ)
長渕剛

1956年生まれ、鹿児島出身の男性シンガーソングライター。1978年にシングル「巡恋歌」でデビューを果たし、立て続けに作品を発表していく。1980年にシングル「順子」が初のチャート1位を獲得し、その名を全国に浸透させる。以後、85年「勇次」、87年「ろくなもんじゃねぇ」、88年「乾杯」「とんぼ」など、80年代を通じてヒットを連発。2003年シングル「しあわせになろうよ」でシングルの総売り上げは1000万枚を突破した。さらに12枚のオリジナルアルバムでオリコンチャート1位獲得するなど、現在までで数々の金字塔を打ち立てている。またテレビドラマや映画にも出演し、俳優としても高評価を獲得。2004年8月には桜島の荒地を開拓して作った野外会場でオールナイトライブを敢行し、日本全国から約7万5000人のファンを集めるという驚異の集客力を見せつけた。2009年3月にユニバーサルミュージックへ移籍。2011年の東日本大震災後は復興支援ラジオ番組を立ち上げたり、航空自衛隊松島基地で自衛隊員激励ライブを実施したりと復興を目的とした活動も精力的に行っている。2014年には37年のキャリアで初のオールタイムベスト「TSUYOSHI NAGABUCHI ALL TIME BEST 2014 傷つき打ちのめされても、長渕剛。」を発売。同作を携えたアリーナツアーでは、アメリカ人メンバー3人を加えた日米混成のバンドを従え、各地で公演を成功させた。また同年10月よりスタートしたラジオ番組「SCHOOL OF LOCK! Saturday 長渕LOCKS!」では「炎の生活指導担当」として、10代の悩みと全力で向かい合う姿が反響を呼んでいる。2015年8月には静岡・ふもとっぱらにて10万人を動員する野外オールナイトライブ「長渕剛 10万人オールナイト・ライヴ2015 in 富士山麓」を実施することを発表している。