音楽ナタリー PowerPush - ななみ

「世界を変えたい」暗黒時代乗り越えたシンガーが語る夢

ヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」にてグランプリを受賞したシンガーソングライターななみが、10月8日にメジャーデビューシングル「愛が叫んでる」をリリースする。

表題曲「愛が叫んでる」は自身の学生時代を“暗黒時代”と振り返る彼女の実体験をモチーフにしたバラードナンバー。今回のインタビューでは、楽曲に込められたメッセージの根幹を成す彼女の暗黒時代のエピソードや、グランプリ受賞までの経緯、また「世界を変えたい」と語るシンガーとしての目標についてなど、メジャーデビュー直前の本人にたっぷりと話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 上山陽介

音楽に生きる希望をもらった

──ななみさんは現在21歳ですが、そもそも歌手を目指そうと思ったのはいつ頃だったんでしょうか?

14歳ですね。中学2年生の頃です。

ななみ

──きっかけはなんだったんですか?

その頃に親が離婚をして、それがきっかけかはわからないんですけど、学校に行けなくなってしまったんです。いわゆる不登校なんですけど、引きこもっているときにずーっと音楽を聴いていて。音楽に楽しい気持ちとか、生きる希望みたいなものをもらって、私もやりたいなと自然に思ったんです。

──そのとき聴いていた音楽はどういうものですか?

“誰々の曲に励まされた”とか全然そういうのじゃないんです。J-POPはもちろんアニメソングとか、ヴィジュアル系とか、なんでも好きで聴いていたから。本当に音楽自体に助けられたと思っています。だから皆さんがよく言うようなこの曲っていうのがないんですよ。

──ななみさんが毎週アップロードしているYouTube番組「きつねとななみ」では、「天城越え」「となりのトトロ」「勝手にしやがれ」と、かなりバラエティに富んだカバーを披露しています。この選曲はななみさん自身が?

自分が知ってる世界の中でどれだけ有名な曲をやるかっていうのを意識して自分で選んでいます。本当にいろいろ聴いてきたので、全部カバーしたいんです。それくらい音楽が大好きなんですよ。

──「勝手にしやがれ」なんかは、ななみさんが生まれる前にヒットした曲ですよね。この曲にアプローチしたきっかけは?

小学生くらいの頃だと思うんですけど、昔の曲のカウントダウンをやる番組をテレビで観たんだと思います。すごくいい曲だなって思って。あと引きこもりのときは、パソコンを触ることが多かったのでYouTubeとかニコ生も観てました。リンクをたどってどんどんほかのを観ていったので、自然とジャンルに関係なく音楽に触れてきたんだと思います。

──かといって日本の音楽にばかり触れてきたわけではなく、プロフィールには好きなアーティストとしてレオナ・ルイスやアリシア・キーズの名前を挙げていますね。

その方々は好きというか尊敬ですね。私の中で神様のような人なんです。最初は自分が真似をできるボーカリストを見つけようって探していて、自分の声が低いので一番近い声質を持っているのが洋楽の方だったんです。でも結局私は日本人なので、それを真似するんじゃなくて、日本人にできることを最大限やれたらいいなと思っています。日本人だったら桑田佳祐さんとか、中島みゆきさんみたいな。自分の節があるのに、ちゃんと時代にフィットしてる歌を歌い続けている方々はすごいって思いますね。

私、ヤンキーだったんです

──プロフィールには、10代の頃が“暗黒時代”だったと書かれています。これは引きこもりと関係があるのでしょうか?

引きこもりの頃も確かにつらかったんですが、私がいちばん暗黒だったと思っているのはその後で。今では外見から想像できないって言われるんですけど、私、ヤンキーだったんです。

──えっ、それはいつ頃からですか?

ななみ

17歳くらいだと思います。その頃はもう歌手になろうって思って音楽活動を始めていたので、高校にも行ってなくて。平日に遊べる友達って学校に行ってない子たちばかりだから、ヤンキー系の子と一緒にいるようになるんです。そうしたら自然と私もヤンキーになってました。毎晩家を飛び出して家に帰らなかったり、毎晩コンビニの前でたむろしたり。本当に意味のないことをしてたと思います。

──当時のことを後悔しているということですか?

あ、でもそうではなくて。暗黒時代はある意味誇りであって、汚点じゃないんです。私は今、こうやって歌手になったわけですけど、それこそいろんな経験をして“愛”ってものにたどり着いたのかなと思っていて。月並みな言い方かもしれないけど、私を含めてみんな愛が欲しくて引きこもったり、ヤンキーになったりしてしまうんです。もちろんあの頃には嫌なこともたくさんあったし、確かにつらかったんですけど今がよかったと思えるので、すごく糧になってます。

ななみ

ななみ

1993年、大分県生まれ。学生時代から地元大分でライブの経験を積み、2013年1月に行われたヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」でグランプリを受賞。NHK大分放送局のノンフィクション番組「ドキュメント 桃」の主題歌として書き下ろし曲「桜」がオンエアされるなど、地元大分での注目を集めた。グランプリ受賞後は、全国22カ所を1人で回る弾き語りツアーを行い、着実にその知名度を上げていく。2014年10月、自身が“暗黒時代”と呼ぶ学生時代の経験をモチーフにした楽曲「愛が叫んでる」をシングルリリースし、日本クラウンとヤマハが合同で設立したe-stretch RECORDSよりメジャーデビューを果たす。