音楽ナタリー PowerPush - OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

TOSHI-LOW×ハナレグミ対談

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDの約5年ぶりとなるニューアルバム「FOLLOW THE DREAM」のリリースと、今年で5年目を迎えるバンド主催の野外イベント「New Acoustic Camp」の開催を記念した本特集では、フロントマンのTOSHI-LOWと「New Acoustic Camp」に初出演するハナレグミの対談をお届け。ハナレグミのイベント出演決定を機に実現したこの対話には、1人のバンドマンとして、ボーカリストとして、音楽と真摯に向き合う彼らの生きざまが映し出されている。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 宮腰まみこ

同い年の2人

左からハナレグミ、TOSHI-LOW。

──お2人は1974年生まれで同い年なんですよね。しかもSUPER BUTTER DOGの結成が1994年で、BRAHMANの結成が95年だから、音楽的なキャリアの長さもほとんど同じですね。

永積 崇 ええ、そうなんだ!

TOSHI-LOW だから同期っつーか。すれ違ってないだけで、俺は勝手に知ってたっていうかさ。

──実際に面識を得たのはいつなんですか。

永積 最初に挨拶したのはフジロックのときだよね。それが6年ぐらい前かな。クラムボンの楽屋で、ミトくんに紹介してもらって。

──第一印象はどうだったんですか?

永積 一瞬パッと挨拶したぐらいだったからね……ちびっ子が生まれてすぐだったのかな? ちびっ子をあやしてる姿が……。

──優しいお父さんっていうイメージ(笑)。

永積 でも気配はすごかった。なんか主がいるなっていう(笑)。

TOSHI-LOW 俺は、よくSUPER BUTTER DOGやソロでCSに出てるのを観てたからやっかんでて。2002年ぐらいにハナレグミになって、いろんな人とセッションやったりしてるのも「けっ!」と思ってたの(笑)。そのときは「俺はそういうことはやらない!」と強気に思ってた時期だったのね。でもよく考えたら「できない」だけで(笑)。実はすごくうらやましかったんだと思う。

──いろんな人と自由にやってるのが。

TOSHI-LOW そう。結果、震災があって、自分も弾き語りを始めて、いろんな人とセッションするようになって、すんごい楽しいし。そのとき、SUPER BUTTER DOGやハナレグミがやってたこともう一度見直したりしてね。2年前ぐらいかな、細美武士(the HIATUS)に弾き語りやれって言われてやったの。

永積 うん、うん。

TOSHI-LOW そのときに、弾き語りってどうやるかわからなくてすげえYouTubeを観たの。「ハナレグミ」で検索して(笑)。

永積 あはははは!(笑)

TOSHI-LOW だから……ずっと気にはなってたんだよね。

──弾き語りをやる人はいっぱいいますけど、特に永積さんのすごいところは?

TOSHI-LOW

TOSHI-LOW なんかさ……ハスキンのカバー(「The steady-state theory」)やってたじゃない? 俺、もともとあの頃の曲が好きになれなかったの。ハスキンが変わってっちゃった頃の曲で。もともと俺はANTIKNOCKとかでハスキンと一緒にやってたし、もっとパンクっぽいハスキンが好きだったからね。でもどんどんやわらかくなって多様性のある音楽になっていって、後半のハスキンは好きじゃなかった。だけどあのカバーを聴いてすごく好きになって。

永積 ああ、うれしいなあ。

TOSHI-LOW カバーの考え方もあれですごく変わって。自分たちの色でガーンとやるのがカバーだと思ってた。でもああいうふうに、原曲のよさを引き出して原曲を聴いてみたいと思わせるカバーの仕方ってすげえカッコいいと思って。だから……意外と勝手に(ハナレグミを)俺の起点にしてる部分がある。

──それは永積さんの歌の解釈力と表現力ですね。

TOSHI-LOW うん。でも媚びてるわけじゃないし。ちゃんと自分の色を出してる。圧倒的に声がいいし、歌がうまいし。ただそのときは、自分もストロングスタイルだけでずっとやってきちゃったから、音楽に対してこう……いまひとつ向き合えてなかったというか。だから最近になって素直に音楽に向き合えて、弾き語りやったり、こうやって今まで話さなかった人としゃべったりするのもすごく楽しい。

「バンドマン」と「ボーカリスト」

──永積さんはコンポーザー、ボーカリスト、ギタリストなどいろんな側面がありますけど、自分としてはどの意識が強いですか?

永積 やっぱり歌っているのが一番……強いかな。

──自分はまず、ボーカリストであると。

永積 ボーカリストだと思いますねえ。

──TOSHI-LOWさんはちょっと違ったんですよね、以前は。

TOSHI-LOW ボーカリストっていうよりは……バンドマンっていうか。どっちかといったら。

──でも最近は少し変わったんですよね、歌うことに関して。

TOSHI-LOW うん、全然変わっちゃった。表現のこととか、自分はこうあるべきだとか、立ち姿とか、そういうことばっかり追求したあげく、音楽をちゃんとやってなかったなってことに気付いちゃったから。歌と向き合ってなかったし。

──カッコつけてたってことですか?

TOSHI-LOW うん(笑)。カッコつけるのがバンドマンだと思ってるんで。カッコつけたり、ケンカ強くなるとか、そういうことばっかり命懸けてたから(笑)。そうやって突っ張るしかなかった。何かに対して集中する、というよりは排除していくっていうか。それで独立性を保ってたから、ほんとの意味では戦ってなかった気がする。

──永積さんは、そういう意味で音楽や歌に対して意識が変わった経験はありますか。

ハナレグミ

永積 いやあ、日々、歌ってなんだろうってすごく考えてて。TOSHI-LOWくんの記事とかもよく読んでてさ。何を考えてるんだろう、どんなメッセージを発してるんだろうって。僕はもともと「声を出す」ことが好きだったんです、シンプルに言うと。バンド始めたときも、歌詞なんかいらないなって思うぐらい、声だけが一番しっくりくる気がしてたの。だからそのあとに歌詞を書くというのがすごくしんどくて。

TOSHI-LOW ああー。

永積 なんだろう歌詞を書くことって、どういうことなんだろうっていうのが、最初にすごくあったんですよ。言葉と歌の関係性っていうのはいまだによくわからない。どういう歌が今の自分にぴったりくるのかな、とか。そういうことはよく考えますね……ま、最終的に歌うときには何も考えてないですけど(笑)。

──何かを言いたくて歌を歌っているのではない、ということですか。

永積 いや、でも言葉にするときには、言いたいことを落とし切れてないとユルくなっちゃう気がするんだよなあ。

──あくまでも個人の印象ですが、ハナレグミの音楽って最近、すごく変わってきた気がするんですよ。特にビクターに移籍してから。音の形態じゃなくて、より地に足が着いてきたっていうか。何か意識の変化ってあったんですか?

永積 なんでしょうねえ……自分も、もっとちゃんと音楽やりたいって思うようになったのかなあ(笑)。バンドを解散したあとのソロは、バンドのときにできてなかった、自分の中のフォークみたいな感覚を一気に出すっていうので始まったんですよ。でもその初期衝動だけでは次にいけないっていうのがあった。やっぱりバンドをやってたから、1人になっても、人と音楽を作るって関係性がすごく大事なんですね。頭に描いたイメージ通りの設計図を書くっていうよりは、「ええっ、こんなことになるの、すげえな」っていうふうになりたいっていうか。自分の知らない場所に連れていかれたいっていうか。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDニューアルバム「FOLLOW THE DREAM」 / 2014年9月3日発売 / NOFRAMES
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND「FOLLOW THE DREAM」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3500円 / TFCC-86487
通常盤 [CD] / 2800円 / TFCC-86488
CD収録曲
  1. Follow The Dream
  2. Broken Glass
  3. 夢の跡
  4. Blind Moonlight
  5. Making Time
  6. Pilgrimage~聖地巡礼~
  1. Ride Today
  2. N.A.C
  3. Treason Song
  4. Clumsy Queen “Isabella”
  5. 朝焼けの歌
  6. Question
初回限定盤DVD収録内容
  • 「New Acoustic Camp」のハイライトを集めたライブ&ダイジェスト映像
  • 未公開MVを含むMUSIC CLIPS
  • Making Time
  • 夢の跡
  • otherwhere
  • New Tale
  • all the way
  • Thank You
  • Dissonant Melody

「New Acoustic Camp 2014」

2014年9月13日(土)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
SOIL & "PIMP" SESSIONS / the band apart / 安藤裕子 / Mini-Atus / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
Stage HERE
奇妙礼太郎 / 押尾コータロー / ハナレグミ with U-zhaan / Caravan(New Acoustic Candle) / 中納良恵(New Acoustic Candle)
Stage VIA
くもゆき / T字路s / つじあやの / 武藤昭平 with ウエノコウジ
2014年9月14日(日)群馬県 水上高原リゾート200

<出演者>

Stage YONDER
YOUR SONG IS GOOD / 片平里菜 / フラワーカンパニーズ / スガシカオ / EGO-WRAPPIN'
Stage HERE
Johnsons Motorcar / orange pekoe / salyu×salyu / 真心ブラザーズ
Stage VIA
石崎ひゅーい / mabanua with 関口シンゴ / Predawn
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
TOUR 2014 -FOLLOW THE DREAM-
2014年10月6日(月)沖縄県 島野菜カフェリハロウビーチ
2014年10月11日(土)茨城県 mito LIGHT HOUSE
2014年10月12日(日)高崎県 高崎club FLEEZ
2014年10月17日(金)宮城県 darwin
2014年10月19日(日)福島県 AREA559
2014年10月23日(木)新潟県 ジョイアミーア
2014年10月24日(金)長野県 まつもと市民芸術館 小ホール
2014年10月31日(金)大阪府 Shangri-La
2014年11月1日(土)京都府 GROWLY
2014年11月2日(日)岡山県 ルネスホール
2014年11月4日(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
2014年11月7日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
2014年11月9日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
2014年11月15日(土)愛知県 Tokuzo
2014年11月21日(金)東京都 EX THEATER ROPPONGI
2014年11月29日(土)宮城県 BLUE RESISTANCE
2014年11月30日(日)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
(オーバーグラウンドアコースティックアンダーグラウンド)

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

BRAHMANのメンバー4人とスコットランド系アメリカ人のMARTIN(Vo, Violin, G)、KAKUEI(Per)の6人からなるアコースティックバンド。TOSHI-LOW(BRAHMAN)と MARTINの出会いをきっかけに、2005年6月に結成される。2005年にオムニバス盤「The Basement Tracks-10YEARS SOUND TRACK OF 7STARS」に初音源「Dissonant Melody」を提供し、2006年に1stアルバム「OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND」にてデビュー。その後もBRAHMANや個々の活動と並行して定期的なライブツアーを行い、2010年からは野外フェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーを務める。2014年9月、約5年ぶりのフルアルバム「FOLLOW THE DREAM」をリリースした。

ハナレグミ

ハナレグミ

1974年東京生まれの永積 崇(ex. SUPER BUTTER DOG)によるソロユニット。2002年11月に1stアルバム「音タイム」をリリースし、そのおだやかな歌声が好評を得る。2005年9月には 東京・小金井公園でフリーライブ「hana-uta fes.」を開催し、台風に伴う大雨にもかかわらず約2万人の観客を集めた。2009年6月に4年半ぶりとなるアルバム「あいのわ」をリリースし、ツアーファイナルの日本武道館公演を成功させる。2011年9月には5thアルバム「オアシス」を発表。2013年5月リリースのカバーアルバム「だれそかれそ」では多くの名曲をさまざまなアプローチで歌い上げ、ボーカリストとしての力量を見せている。