音楽ナタリー PowerPush - VAMPS

新たな刺激と確固たる経験が生み出した“新章第1弾”

VAMPSがニューシングル「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」をリリースした。昨年9月に英語版ベストアルバム「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」を世界各国で発売して以降、ニューヨークやヨーロッパ諸国など精力的な海外ライブを行ってきたVAMPS。1年ぶりの新曲となる今作は過去のVAMPSとはひと味異なる、新たな可能性を感じさせる仕上がりとなっている。

昨年7月のインタビュー(参照:VAMPS「AHEAD / REPLAY」インタビュー)から約1年ぶりにナタリーに登場したHYDE(Vo, G)とK.A.Z(G)は、本格的な海外進出を経験して感じた思いを吐露。そして新作「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」を通じて明かす曲作りやアートワークへのこだわり、来たるニューアルバムの制作状況についても語ってくれた。

取材・文 / 西廣智一

海外では「気持ち的に新人」

──最近のVAMPSは海外展開など含めて非常に順調に活動しているように映りましたが、新曲のリリースは前作「AHEAD / REPLAY」から今回のニューシングル「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」まで1年以上も間が空いてしまいましたね。

HYDE(Vo, G) ライブの合間に新曲を作ろうと思ってたんですけど、ツアー中はなかなか作れなくて。結局ツアーが終わってから今までずっと地下にこもって制作してた感じです。ゴーストライターがいればいいんですけどね(笑)。

──実際にアルバムが発売されて以降の海外公演での手応えはいかがでしたか?

K.A.Z(G) 「曲を聴いてくれてるんだな」っていう印象を受けた。もちろんCDが出る前からいろんな手段で曲を聴いてくれてた人もいるんだろうけど、ちゃんとCDを出したことによって曲も今まで以上に広まったと思うし。手に取りやすいところにまで音源を持っていくことが一番大切なんだなって思いました。

──例えば「THE JOLLY ROGER」みたいに、新曲を日本とほぼ同じタイミングで海外でもデジタル配信できるようになったのも大きいですよね(参照:VAMPS、英フェス直前ライブで「X-TRAIL」CM曲披露)。

HYDE ええ、単に便利なだけじゃなく、戦略的にもいろいろ考えられますし。例えば日本での発売前に海外で先行配信したり、違うバージョンを国ごとに配信したり。海外のスタッフも一生懸命やってくれてるので、そこは楽しんでやれてます。

──6月にイギリスで行われた「Download Festival 2014」にも初出演しました(参照:VAMPS、英フェスで強制終了も熱烈“VAMPSコール”発生)。ビッグネームがたくさん出演する海外の大型ロックフェスに出演するというのも、これまでの海外での活動とは違った面白みがあったかと思います。

HYDE やっぱり雰囲気がよかったですよね。僕、これまではアメリカのフェスにしか出たことがなかったんですけど、それとはまた違った……もうちょっと、イギリス的な感じ?(笑) アメリカのフェスって砂漠を横断していくようで、雨が降らないイメージがあるんです。それはそれでカッコいいんですけど、それとはまた違った気持ちのいい環境でしたね。とはいえ、日本で感じないような危機感も覚えましたよ。「うわあ、このバンドのあとにやるのか」とか。そういうことがとてもいい刺激になって、個人的にはよかったなと思ってます。

K.A.Z 日本だといろんなジャンルが混ざったイベントが多いけど、Download Festivalは本当にロック一色な感じで、そういう意味でも日本にはない刺激を受けるというか。気になるんですよね、周りのバンドが。僕も昔からイギリスの音楽を聴いて育ってきたんで、そういう人たちと同じステージに立てるのも、いろんな音楽を聴いて自分たちなりに解釈したサウンドを提示できるのもうれしいです。

HYDE 気持ち的には新人のつもりで行ってますからね。向こうの若手バンドも僕らのことを年上だと思ってないんじゃないかな?(笑)人って、自分をそういう状況に置かないとなかなか進化しないと思うんです。常に現状で満足してるわけじゃないから、こういうことにすごく意味がある気がしますね。

マイブームは「納豆そうめん」と「ダンス系」

──さて、今回リリースされたシングル「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」ですが、表題2曲からはバンドの新たな側面が感じられます。K.A.Zさん作曲の「GET AWAY」はダンサブルなテイストで、HYDEさん作曲の「THE JOLLY ROGER」はスケール感の大きいスタジアムロック調。どちらも今までのVAMPSになかったタイプの曲だと思いますが、曲作りの際に何かテーマはあったんですか?

HYDE ライブをしているとどういう曲が盛り上がってるかがなんとなくわかるので、そこを踏まえてヘビーだけどキャッチーなサウンドが欲しいなと。そういう流れで僕は作っていきました。あと、K.A.Zくんはいろんな音楽を聴くから、その時代なりの自分のブームもあるだろうし、そういうのも反映されてると思いますよ。

──ちなみに今、お2人の中で個人的にブームになっているものって、なんでしょう?

HYDE 納豆そうめんですかね?(笑)

──ええっ?(笑)

HYDE 違う?(笑) 音楽ですよね……僕、あんまり音楽を聴かないんで……普通にLinkin Parkとか聴きますけど。最近だとなんだっけ……Issuesとか聴いてましたね。あとはマネージャーが車で流してるのを聴いて、気になるのがあったら覚えておくって感じかな。

──ではどちらかというと、音楽以外からインスピレーションを受けることが多いんですか?

HYDE いや、音楽からも受けるんですけど、別に聴いてよかったと思ったものをそのままやりたいわけではないんで、なんとなくでしか聴いてないんです。

──K.A.Zさんはいかがですか?

K.A.Z しいて挙げるならダンス系かな。やっぱり“今の音楽”っていうところでシーン的にも盛り上がってるし、実際に聴いても「あ、なるほどな。これは盛り上がるな」と納得できる部分が多いし。僕の場合、昔からいろんな音楽に触れてきて、そこから受けた影響を知らないうちに自分で消化して、それがどんどん積み重なっている気がするんです。

曲作りは年々、時間がかかるようになってきた

──では今回の「GET AWAY」は、そうやって消化して積み重ねた音楽的要素から生まれたもので、特に新しいことをやろうとしたわけではないと?

K.A.Z うん、そうですね。僕は曲を作るときは「こういうふうにしよう」みたいなことは特に決めずに作業に取りかかって。その中で面白そうなフレーズを思い付いたらそれを取っておいて、あとで積み重ねて完成させることが多いんです。「GET AWAY」も一気にできた曲ではないんですよ。

──あ、そうなんですね。聴いた印象ではOBLIVION DUSTにも通ずる要素があって、K.A.Zさんの色がすごく濃く出た曲だったので、すんなり完成したのかなと思ったんですが。

K.A.Z すんなり完成する曲って、めったにないですね(笑)。

──HYDEさんは曲作りは一気にできてしまうほうですか? それとも1曲に時間をかけるほうですか?

HYDE 僕は曲を作ろうかなと思ったら、5分ぐらいでスッと出てきますね……いや、そうなればいいなと常に思ってるだけですが(笑)。実際は1曲に1カ月かかりますね。なんだかんだで、自分が気に入るまでずっといじり続けますから。特に年々、時間がかかるようになってきたかもしれないなあ。

──やっぱり曲作りを長く続けていると、似たような曲が出てくることもあるでしょうし。新しいものを追求し続けるのは大変ですよね。

HYDE いい曲のハードルも上がってるしね。あと、バンドとしてどう見られたいかとか、そういうところもあるかな。僕の場合、ラルクではメンバーそれぞれが好きなように曲を作ってきて、それをまとめてアルバムにしてたから、どう見られたいかというのはあまり関係なかったのかも。でもVAMPSの場合は「こういうバンドにしたい」という自分のこだわりは強くて、それはどんどん強くなってるのかもしれないですね。

ニューシングル「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」 / 2014年8月20日発売 / Virgin Music
初回限定盤A [CD+DVD] / 1944円 / UICV-9061
初回限定盤B [CD+DVD] / 1944円 / UICV-9062
通常盤 [CD] / 1242円 / UICV-5033
初回限定盤A CD収録曲
  1. GET AWAY
  2. THE JOLLY ROGER
  3. GET AWAY -Remix-
  4. GET AWAY -Instrumental-
初回限定盤A DVD収録内容
  • GET AWAY -MUSIC VIDEO-
  • GET AWAY -MAKING-
初回限定盤B CD収録曲
  1. THE JOLLY ROGER
  2. GET AWAY
  3. THE JOLLY ROGER -Wildstylez Remix-
  4. THE JOLLY ROGER -Instrumental-
初回限定盤B DVD収録内容
  • THE JOLLY ROGER -MUSIC VIDEO-
  • THE JOLLY ROGER -MAKING-
通常盤収録曲
  1. GET AWAY
  2. THE JOLLY ROGER
  3. GET AWAY -BAGUZERO Remix-
  4. THE JOLLY ROGER -Gomi's I Wanna Rock Right Now Remix-
VAMPS(バンプス)

HYDE(L'Arc-en-Ciel)とK.A.Z(OBLIVION DUST)が2008年に結成。2008年の結成以来、国内外で約300本以上のライブを敢行。VAMPSの代名詞となった全国のZeppにて連続公演を行う“籠城型ツアー”をはじめ、アリーナ公演、ラグーナビーチなどでの野外公演、恒例のハロウィンライブイベントなど、多彩なスタイルのライブを行っている。

海外での活動も積極的に行い、ワールドツアーとして北米、南米、ヨーロッパ、アジアなどでのライブを敢行。南米では2ndアルバム「BEAST」が日本人アーティスト初のセールスチャート4位を記録した。同公演の模様を収録したDVD「VAMPS LIVE 2010 WORLD TOUR CHILE」は各方面から注目を浴び、日本の音楽DVD部門のセールスチャートで1位となった。

2013年にユニバーサルミュージックへの移籍を発表。移籍第1弾作品として4月にリリースされた映像作品「VAMPS LIVE 2012」は、オリコン週間ブルーレイランキングで1位を獲得した(音楽DVD週間ランキングは3位、総合7位)。7月に2年半ぶりのシングル「AHEAD / REPLAY」をリリースし、9月には全曲英語詞によるベストアルバム「SEX BLOOD ROCK N' ROLL」を世界各国で発表。同月末よりヨーロッパツアーを開催した。2014年3月には2度目のロンドン公演が実現したほか、同年6月にイギリスの野外フェス「Download Festival 2014」に出演。8月には約1年ぶりとなるニューシングル「GET AWAY / THE JOLLY ROGER」をリリースした。