メッセージを発するという照れがなくなった

──「具体的な応援」は前作「YOUNG!」と比べてもわかりやすいメッセージソングというか、応援歌が多いですよね。とってもストレートで、心に響く歌ばかりで。

なんかね、そういう楽曲を歌えるようになったというか、歌いたいなって思い始めてきて。最初はライブでもメッセージを濁してたんですよ。なんか恥ずかしくてね。でもこの歳になって、そういうことをちゃんとやったらええんじゃないかなって、メッセージを発することへの照れがなくなってきたというか。

──半年の間に心境の変化があったと？

やっぱり僕の大好きな忌野清志郎さんが以前「メッセージがあるのがロックだ」みたいなことをふんわり言ってて「せやな！」って影響されちゃって。徐々にですけど、やっぱり思ってることを歌に乗せてメッセージを伝えていかなきゃダメなんだろうなって考え始めた頃、「みんなのうた」で曲を歌わせてもらって。ライブに親子連れが多くなってきたのがそのきっかけですね。

──「ファミリーコンサート」と題したライブを定期的にやられてますよね。

そうなんです。そこで「みんなのうた」でも流れた「てんとうむし」とか歌うとお子さんはすごく喜んで一緒に歌って踊ってくれて。で、子供たちを中心に喜ばせていたら一緒にいるお父さんやお母さんもなんか喜ばせたいなって思うようになったんですよ。それで今回のアルバムを作るにあたって、だいぶ昔に僕が作った曲を僕と同世代くらいのお父さんとお母さんに聞いてもらいたくなったんです。若かった頃のいろんな感情を思い出してほしくて。

──新曲だけじゃなくて、ワタナベフラワーとしてけっこう昔に作られた楽曲も収録されてたんですね。

僕らの楽曲って今までのレコード会社が潰れちゃって廃盤になってるんですよ。ライブでは今でも披露してるんですけど、それならちゃんとアルバムに入れて聴いてもらいたいなって思って。「インスタントコーヒー」「ビバ結婚～YY mix～」「誕生日」「ゴーゴーレッツエンジョイサマー～来年の夏ver～」の4曲が昔の楽曲です。

具体的な応援をお願いします

──アルバムタイトルを「具体的な応援」にしたのは、やっぱり応援歌的なものが多く収録されているからでしょうか？

ライブで例えば「CD出ましたよ」とか「ライブやりますよ」とか言うときに「買ってください」って言うのがセンスないなって思って。なんか違う言い方ないかなって考えたときに「皆さん、具体的な応援をよろしくお願いします」って言ったんですよ。それがめっちゃウケて（笑）。ストレートにこれって、アルバム買ってくださいってことなんですけど（笑）。もちろん表題曲の「一生懸命はやめられない」って曲に込めた思いのこともあるし、意味はそれだけじゃないんですけどね。深読みしてもらってもいいですけど、意外と浅かったという（笑）。

──シンプルですごくいいタイトルだなって思ってたんですけどね。

だからこのCDの帯にもね「例えばこのCDを買うとか」って書いてあるんですよ。

──なるほど（笑）。

もちろん僕らもいっぱい応援したいわけですよ。「一生懸命はやめられない」ができてから、一生懸命な人を労いたいなって。それで僕ら、東北バスツアーっていうのを企画してて、これを今もっとやるべきだなって思ったんです。

──もうどれくらいやってるんですか？

バスツアーは3回やってます。毎回参加者募集するとすぐ満員になってしまうくらい人気の企画なんですけど、全部東北の観光会社さんにお願いしてて。そうやって東北の方にお仕事をお願いしつつ、ファンの皆さんにも向こうでお金を使ってくれたらいいなと思ってね。これもいわゆる“具体的な応援”の1つかなと。

──クマガイさんも阪神淡路大震災を経験されてますが、ご自身の体験もあってもっと東北を支援したいと？

最初の1年はめっちゃボランティアの人が行くだろうって経験上知ってたから行かないって決めてたんですよ。でも本当にね、1年くらい経つとすっと誰もいなくなるんです。まだ仮設住宅とかに住んでる人もたくさんいるのにね。だから少し経ってから何かできることはないかって考えて、地元のラジオ局で「僕らに来てほしいところがあったら言ってください」ってアナウンスしたんです。そうしたら気仙沼の保育園に子供を通わせている親御さんから依頼があったんですよ。それで今まで有名人とかまったくボランティアで行ったことないような保育園に行くことになったんですけど……。